SDGs(エス・ディー・ジーズ:Sustainable Development Goals)とは、2015年に開催された国連サミットにおいて、「我々の世界を変革する:持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」として採択された宣言及び目標です。このアジェンダは、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継であり、地球と全人類の未来にわたる繁栄のための行動計画として策定された17の目標と169のターゲットからなる持続可能な開発目標のことです。
SDGsは、世界のすべての人に共通する「普遍性」が特徴であり、「No one will be left behind.(誰ひとり取り残さない)」という理念が掲げられています。すべての人のために2030年までに達成すべき目標として、5つのP(People:人類、Planet:地球、Prosperity:繁栄、Peace:平和、Partnership:パートナーシップ)を基盤とするバランスのとれた経済、社会、環境の持続的な開発をめざすための行動指針と理解することができます。
この記事では、なぜ昨今においてSDGsが注目されているのかについてまとめてみました。
MDGsからSDGsへ
地球規模における社会や環境への課題に対しては、これまで何も取り組んでいなかったわけではありません。国連や政府機関を中心に、発展途上国・新興国に対する経済、食料や人道的支援等々がなされてきました。これらは、MDGs(Millenium Development Goals)が掲げる国際的な目標に基づく活動で、主に国連や政府機関が主体でした。
MDGsは、2015年までに達成すべき8つの目標で構成されており、2015年の段階で、貧困や飢餓への対応の一部を除き概ね達成したと評価されました。そこでSDGsは、MDGsが達成できなかった一部の目標を継続するとともに、気候変動や環境などの新たな課題への取り組みを併せた目標として2015年に国連で採択されました。
MDGsは、発展途上国や新興国の経済や食料の支援及び教育や差別などの人道的支援が柱になっており、活動主体は、国連、政府機関や一部の商社だけでした。しかしながら、SDGsでは新たな目標が追加されたことにより、地球全体で達成すべき目標に変化したため、あらゆる業種の民間企業においても注目されることになったのです。
例えば、温室効果ガス(CO2)の排出によってもたらされる地球温暖化による気候変化や気象災害の増加への取り組みとして、第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)によって、先進国だけではなく開発途上国についても温室効果ガス排出量削減を求めるようになりました。
また、国連環境計画(UNEP)第2回国連環境総会(UNEA2)においては、海洋プラスチックごみ対策に関する議決が採択され、プラスチック製のストローやごみ袋から海洋生物を守る活動やペットボトルなどのマイクロプラスチックによる海洋汚染対策が近年話題になっています。
温室効果ガスを削減するためには、工場などの排煙や自動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素の排出量を減らす対策が必要であり、工場を保有する民間企業が一丸となって取り組まなければ達成することは絶対にできません。
また、開発途上国では、石炭や木炭燃料の使用量の削減や、焼き畑農業による二酸化炭素の排出量の削減に努力しなければならず、再生可能エネルギープラント開発やスマート農業に関する技術を提供していかなければなりません。そして、あらゆる業種の民間企業の活動や技術開発なくしては達成することができない世界共通の課題なのです。
SDGsは、国連、政府機関、法人や個人のすべてが努力すべき目標であり、2030年の未来における地球上の全人類の経済的発展による豊かな社会の実現方法であると言えるのです。
企業がSDGsに取り組む理由
スターバックスコーヒーがプラスチック製の使い捨てストローの提供について、世界中の店舗で2020年までに廃止すると発表し話題になりました。また、日本政府は、食料品を入れるビニール袋の有料化をスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに義務付け、国民に対してトートバックやエコバッグの利用促進を実践しています。これらの取り組みは、直接的には海洋プラスチックごみによる海洋汚染と海洋生物の保護が目的であり、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に対するアクションと言えます。
また、最近では「エシカル(ethical)消費」という言葉にふれる機会が多くなりました。消費者庁の消費者基本計画によると「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」と定義されており、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に対するアクションに位置付けられています。セブンイレブンジャパンでは、エシカルプロジェクトと称する食品ロス削減に取り組む活動を推進しており、民間企業としてSDGsに貢献しされています。
なぜ企業は、自主的にSDGsに取り組んでいるのでしょうか。それは、企業活動を持続的に継続するために最も重要なことがあるからです。上場企業は、株主である投資家から事業継続に必要な資金を調達し、事業活動を行って得られた収益を株主に配当金として支払います。
投資家は、収益性の高い企業に投資するのが一般的ですが、昨今においては、企業の環境・社会・ガバナンスへの配慮を評価して投資先を選択しています。このような投資家の行動をESG投資と言います。最近は日本の企業においても、統合報告書と呼ばれる決算報告書を発行するようになりました。この報告書の中において、決算内容に併せてESG活動内容や成果を積極的に報告しています。
欧州や欧米諸国ではESG投資が年々増加しており、公的年金基金でもESG投資が採用されはじめていて、ESGを考慮した企業経営の重要性がますます高まっています。企業は、投資家の注目を集めるためにSDGsに真剣に取り組んでいかなければならないのです。
ESGは、投資側の企業に対する評価軸ですが、企業側から見たESGは、自社のSDGsへ貢献度としてとらえることができます。非上場の企業などにおいても、将来の事業拡大などを考慮すると、SDGsを無視することは絶対にできません。ESGを配慮していない企業は、今後消えていくことになると予想されています。
企業がSDGsに取り組む理由、それは企業が未来に生き残るために最も重要な経営行動だからなのです。
SDGsの役割り
SDGsは、以下のような役割があります。
- 社会構築の基準
- 未来への道しるべ
- 原点回帰
「社会構築の基準」は、目標17のターゲット17.14「持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する」に表れています。2030年以降の新しい未来を創るためには、政策と市民活動のベクトルが同じ方向を向いていることが大前提であり、目標達成に向かって政策の一貫性が保たれていることがとても重要です。SDGsは、未来をつくる政策の内容に対する妥当性を確認するための世界共通のものさし(基準)として機能することでしょう。
新しいイノベーション創出の際に、その中で「やるべきこと」と「やらないこと」を整理する判断基準としても、SDGsが機能します。SDGsは、未来に向かって進むべき方向を照らす「未来への道しるべ」の役割を担っています。
また、事業転換や業態転換による経営改善を実行する場合、新しい未来に向かって持続可能な事業経営を目指すため、企業の理念、目的、目標や経営方針の妥当性の判断基準としても、SDGsが機能することでしょう。SDGsには、持続可能な社会をつくるために必要なエッセンスがたくさん盛り込まれています。持続可能な社会づくりと新しい未来を創造するうえで、SDGsを活用してしっかりと原点回帰していくことがとても重要なのです。
2030年の新しい未来に向かって、さあ、みなさん一緒にSDGsに取り組んでいきましょう。
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