SDGs 目標12 作る責任 つかう責任

SDGs 目標12 ロゴ

SDGs目標12の趣旨は、「持続可能な生産消費形態を確保する」です。この目標は、全部で11個のターゲットで構成されています。

国際連合広報センターによる、2019年版の世界人口推計によると、わずか十数年のうちに地球上の人口は現在の77億人から約85億人、さらに2050年までには100億人に達すると予想されています。また、地球規模で少子高齢化が進行しており、これまでとは異なる世界人口の規模と構成が変化しつつある中、近い将来において現在のような生産活動と消費活動の形態では持続できなくなる懸念が生じてきました。

SDGs目標12は、このような世界共通の問題に対する具体策が提示されています。その中でも、私たちが特に注目している2つのターゲットについて、掘り下げてみたいと思います。

12.5 廃棄物の発生を減らす

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2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、産業廃棄物の発生を大幅に削減する。

http://www.env.go.jp/policy/sdgs/guides/SDGsguide-siryo_ver2.pdf

このターゲットは、環境省が推進している3R(Reduce、Reuse、Recycle)キャンペーンにも通じており、限りある地球資源を保護することを目的として、生産者と消費者の両方が共通の認識に立って、産業廃棄物の発生を大幅に減らすことを目指しています。

これらを達成するために、私たちは以下の2つのアプローチがあると考えています。

  1. エシカル消費の推進
  2. フードロスへの対策

エシカル消費の推進

エシカル(ethical)とは、「倫理的な」という意味の形容詞です。もっと簡単に言い換えると、「一般的な守るべきルール」ということです。エシカル消費とは、消費に関する一般的な守るべきルールに従って行動することと理解することができます。また、法律や規則によって定められ遵守すべきものではなく、日々の生活などにおける一般的な行動様式ととらえることもできるでしょう。

消費者庁の消費者基本計画によると、「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」と定義されており、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に対するアクションに位置付けられています。

例えば、セブンイレブンジャパンが実践しているエシカルプロジェクトは、賞味期限や消費期限によって発生する食品ロスを削減するための活動で、販売者(生産者)側と消費者の日々の意識的行動によってもたらされるSDGs達成への取り組みということができます。

地産地消の推進により、身近な場所から、新鮮・安全でより安価な生産物を購入することができるようにすることも、エシカル消費において重要なことです。生産品の流通においては、鮮度や消費・賞味期限を確保するために、冷凍・冷蔵や食品添加物を加えるなどあらゆる保存技術が使用されますが、地元において当日に消費するものであれば本来必要のないことなのかもしれません。

このような手間がなくなれば、より新鮮で安全な食品が消費者に提供されることになりますし、生産者にとっても経費節減につながり、収益性が高まる可能性が考えられます。

また、近年は健康志向の高まりによりオーガニックな生産物に注目が集まっています。市場に出回る農産品や水産品には一定の規格が定められているため、キズものや形の不揃いなものは取り引きされず産業廃棄物になってしまいます。しかしながら、トマトやキュウリの味がキズや形で変わるわけではありません。食べる上で何ら問題がないのです。未来に向けて、農薬などを使用していない地元の食材を安心して手軽に購入できるように、生産品の価値の考え方を変えていかなければならないでしょう。

さらに、生産者が丹精込めて生産した商品については、適正な価格によって取引されるべきであり、生産量などによって価格が下がって買いたたかれるような市場であってはなりません。地産地消をベースに生産量を適切にして価格を安定化させることにより、生産者の生活レベルを向上させるとともに、消費者の日々の消費に安心と安全を提供することが可能となるはずです。

冒頭で紹介した3Rキャンペーンについては、ペットボトル、牛乳パックやプラスティック容器に限定されるものではなく、世の中に存在する自然物以外のすべてを対象としてとらえていくことが大切です。例えば、最近では地方で問題となっている空き家についても、民泊施設にリユース(再利用)したり、解体し発生した建材をリサイクルしたりすることにより、産業廃棄物をリデュース(削減)することができます。

フードロスへの対策

まだ食べることができるのに廃棄されることをフードロス(食品ロス)といいます。農林水産省の調べによると、日本国内の食品廃棄物等は年間2,550万トンで、そのうち、フードロスの量は年間612万トン(平成29年度推計値)に達しているそうです。日本人一人当たりのフードロスの量は年間48kgで、日本人一人当たりが毎日ご飯を茶碗一杯分(約132g/日)捨てているのと同じとのことです。

フードロスには大きく分けて「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」び分類され、年間612万トンのフードロスのうち、事業系が328万トン、家庭系が284万トンとなっています。さらに、事業系のフードロスの328万トンは、外食産業で127万トン、次いで商品製造業が121万トン、食品小売業64万トン、食品卸業16万トンとつづいています。

実にたくさんの食品が、まだ食べることのできる状態で廃棄されてることが理解できます。また、事業系食品ロスの量と同じくらい、家庭からまだ食べることができる食品が捨てられているという事実に驚きを隠すことができません。

外食産業では、お客さんの食べ残しなどがほとんどの原因と考えることができます。食べれる量だけ注文するか食べてから注文するなど、消費者がちょっと意識するだけでフードロスを減らすことができるでしょう。

食品製造業では、過剰生産や規格・品質管理によりはじかれてしまった食品の廃棄が考えられます。食品としての品質に問題がない限り、わけあり食材として販売したりするなどの工夫によって食品ロスを削減することが大切です。

食品卸業や食品小売業では、売れ残りの廃棄が中心でしょう。業者側は、適切な仕入れ量を予測したりして売れ残りを減らし、賞味期限や消費期限に応じて割引きしたり、小分け販売したりする工夫が大切です。また、消費者側についても必要な量の食材の購入を心掛け、積極的に割引き商品を活用するほか、賞味期限や消費期限の順に陳列されている順番で購入するなど、エシカル消費の意識を持つことが大切です。ちょっとした意識や行動が食品ロスを大幅に減らすことにつながります。

フードロスの削減に対しては、受注生産への業態転換や需要予測に基づく在庫管理も効果が期待できます。今後は、インターネット受注管理システムの導入やPOSデータと天気予報を組み合わせた人工知能(AI)による需要予測などICT技術を活用したフードロス対策への取り組みが、大手・中規模事業者だけではなく小規模事業者にも拡がっていくことになるでしょう。

12.b 持続可能な観光業に対し、持続可能な開発がもたらす影響の測定手法を開発・導入する

雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。

http://www.env.go.jp/policy/sdgs/guides/SDGsguide-siryo_ver2.pdf

このターゲットは、持続可能な観光業に注目し、その開発が地域にもたらす影響を可視化(見える化)するための客観的データの収集及び分析・評価する仕組みを構築し、地域の人々が情報共有したり事業活動に活用したりすることを可能とすることを目指しています。これらを達成するために、私たちは以下の2つのアプローチがあると考えています。

  1. マーケティング
  2. エンジニア人材の育成

マーケティング

マーケティングとは、広辞苑によると「企業が製品またはサービスを顧客に向けて流通させることに関係した一連の体系的市場志向活動のこと。売買そのものをさす販売よりもはるかに広い内容をもち、販売はマーケティングの一部を構成するにすぎない。マーケティングの内容を機能的に分解すると、戦略政策問題、製品問題、市場・取引問題、販売問題、販売促進問題に大別される。」と説明されています。簡単に言えば、経営にかかわるすべての活動がマーケティングなのです。

なんだかとてつもなく広い話のように聞こえますが、そもそもマーケティングはPDCAサイクル(「Plan」「Do」「Check」「Action」)に基づいて実践される活動であり、経営活動においては、製品の開発から始まり、販売して収益を得るまでの一連の活動で絶え間なく実践されているものなのです。そして、一周回って次の目標に向けてマーケティングがエンドレスに続いていくものです。

最近のマーケティングにおいて欠かすことのできないものはビックデータ解析です。世の中に無数に存在するありとあらゆるデータを収集し、BIツールなどを用いて統計解析的に分析や分類し可視化することにより、そのデータが示す事実に基づいて経営の意思決定を行うこと(データ・ドリブン)がごく当たり前の時代になってきました。

例えば、POSデータを利用して、曜日ごとの来店者数を予測したり、会員情報と紐づけて年齢や性別ごとの商品の販売数の特性などを集計したりすることは、エクセルなどの表計算ソフトがあればすぐに実践できます。最近では機械学習やディープラーニングなどの人工知能によるマーケティングも盛んに行われるようになりました。

人工知能(AI)も統計学的手法の一つなのですが、人工知能の活用によって、複雑なデータ構造から人間では発見不可能な関係性や法則が導き出され、ビジネスに対する新しい知見が得られる可能性があることに大きな期待が集まっています。

エンジニア人材の育成

人工知能(AI)を活用するためには、人工知能に関するの専門的な知識が必要になります。また、人工知能が導き出した結果の意味を理解するためには、統計学的な知識も必要になります。これから先の未来においては、人工知能(AI)は電卓を使うような感覚で活用されるようになると筆者は考えています。

アメリカや中国においては、すでに人工知能を活用したいろいろなサービスが社会の中で実用化されていますが、日本は大きく遅れをとっているのが現状です。その原因は、日本の人工知能(AI)のエンジニア数がアメリカや中国に比べて圧倒的に少ないからです。

日本においては、日本ディープラーニング協会(JDLA)がディープラーニングの知識や開発能力の検定試験を実施し、日本のAI人材の育成と底上げを行っています。JDLAの検定試験では、ディープラーニングの歴史、活用方針を決定するための基礎知識や具体的な手法、事業活用のために必要となる法律に関する知識など非常に幅広い検定試験の内容となっており、ビジネスパーソンだけではなく、AI人材の育成にもとても有効な認定資格です。

筆者もJDLAの2019年のG検定に合格しました。今ではAIビジネスのミーティングなどで有識者としての意見を述べたり、具体的な問題解決の方法を提案できるようになりました。

人工知能の開発においては、収集したデータから利用するデータ要素を決定し、学習に使用できるように整理保存する作業が必要になります。さらには、人工知能の精度を確認するためには、統計学に基づく分析能力が必要となります。これらを実践できる人材は、データサイエンティストと呼ばれており、近年とても認知度が高まってきました。

今後、日本でも人工知能の開発需要が急激に増加してくることが容易に予想できます。大手・中規模事業者だけではなく小規模事業者におけるニーズの高まりや、あらゆる業態における多様なニーズに対応することが求められてくるため、エンジニア人材の育成は不可避の課題なのです。

また、人工知能を地域に普及させるために、エンジニア人材の受け皿となる新しい雇用機会を地域に創出していくことも重要な課題です。

編集後記

SDGsの目標12は、持続可能な生産消費形態を確保するため、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用や、近い将来に人類が直面する可能性のある世界的人口爆発による食糧問題への取り組みのほかにも、合理的に持続可能な開発が推進されるよう、開発がもたらす効果や悪影響に対するアセスメントを行い、SDGsに照らして評価することについて言及していることが理解できました。

2030年までにすべての目標を達成させることがSDGsの理念です。仮に何かひとつの目標達成に貢献するとしても、他の目標達成について考慮していないのではまったく意味がありません。このような状態を「SDGsウォッシュ」と表現することがあります。

一見するとSDGsに取り組んでいるように見えても、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉で、地球環境にやさしいと言いながら、実際は効果がない「グリーンウォッシュ」が元になっている造語です。

ある目標に基づく持続可能な開発が他の目標に対して悪影響を及ぼす場合、その開発自体が間違っている可能性があり見直しが必要であると考えることができます。その一方で、他の目標に対してプラスの影響を及ぼす可能性がある場合は、それが持続可能な開発であると評価することもできます。

つまり、新しい事業展開や業態転換など検討において方向性や何らかの迷いが生じた場合は、SDGsに照らして評価することにより「やるべきこと」と「やらないこと」を判断することができます。

SDGsウォッシュを回避することは、2030年のSGDsの目標達成への近道です。私たちの日々の生活や行動においてもSDGsウォッシュがないか見つめ直し、ちょっとづつ改善していくことも大切なSGDs達成への貢献活動なのです。

SDGsで新しいビジネスの創出と豊かな未来社会の実現を目指し、私たちと一緒に活動していきませんか。

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